連載コラム なるほどね!エキナカ - 知れば知るほど、いつもの駅がもっと身近に!毎月のテーマに沿って、思わず「へぇ〜」って言いたくなるエキ中の“なるほど”をご紹介していきます。

みなさん、こんにちは。エキナカ特派員カズヤです。
2月のテーマは、「車内販売」。新幹線や特急電車で、お弁当や飲み物をワゴンで販売している、あの車内販売ですね。今月は、その歴史やアテンダント(販売員)さんのお仕事内容などについて、徹底解剖しちゃいます。さあ、今月もみなさんを「へぇ〜」と言わせちゃいますよ!

2月のテーマ 『車内販売』

第1回「それは、「食堂車」から始まった」

2008年2月5日


さて第1回目は、「車内販売」の歴史をお話したいと思います。

以前にこのコラムでご紹介した通り、日本の鉄道の歴史は古くて、1872(明治5)年には新橋〜横浜間が開通しました。そして「車内販売」についてですが、こちらも歴史を積み重ねています。
鉄道開通の25年後、1897(明治30)年にスタートしたんですね。
でも知っていましたか?
当時は、販売員さんが押すワゴンから、お弁当とお茶を買って自分の座席で食べるスタイルではなくて、「食堂車」に移動して食事を取るスタイルがメインだったんです!

なので、まずはその「食堂車」の歴史をひもといてみましょう。

当時の列車食堂 当時の列車食堂

日本で最初の食堂車、それは山陽鉄道会社線の兵庫〜徳島間の急行列車から始まりました。
東京発の電車じゃないっていうのがなんか意外ですが、これは今の山陽本線です。

そして1901(明治34)年には急行列車が続々と運転されるようになって、新橋〜国府津間、沼津〜馬場(現在の膳所)間、京都〜神戸間の4つの区間で食堂車が連結されることになりました!

その4区間の食堂車を運営していたのは、格調高いホテルや、フランス料理で有名なあの精養軒でした!その後、運営会社の数も年を重ねるにつれて増し、ついには6社にまで増えていきます。

すると、ここでスタッフの体制や、サービスの内容、制服なども一本化しよう、という動きが出てきて、1938(昭和13)年に、6社の業務を受け継いで、日本食堂株式会社が発足します。

さて、この当時のメニューってどんなものだったのでしょう?

精養軒からスタートしたということもあり、メニューの中心は「洋食」でした。
戦前のことですから、パン食なども今よりずっと珍しく、とても高価なもの。お客さんも、海外へ行き来するような人たちが多かったようです。
このことからも、食堂車が「ハイカラ」なものだったことが分かりますね。

それではハイカラな当時のメニューの一例を見てみましょう!

昭和29年頃のメニュー昭和29年頃のメニュー


果物
オートミール
パン
コーヒーor紅茶


野菜付きダブルステーキ
パン
果物
コーヒーor紅茶


コンソメorポタージュスープ
鮮魚フライ
ライスor麺類
野菜付き肉料理
アイスクリームorプリン
果物
パン
コーヒーor紅茶

日本食堂のポスター 日本食堂のポスター

です。 …いやあ、豪華ですね。ダブルステーキってどんなものだったんでしょうね? 夜のメニューなんかは魚フライと肉料理と両方あって、かなりボリュームたっぷり。この夜のメニューは150銭でした。
昭和15年にそば一杯の値段が15銭ほどですから、食堂車での夜ごはんは、なんとその10倍もの値段ということになります!
やっぱり、食堂車が特別なものだったことがわかりますね!
でも、当時の乗務員さんたちは、電車のなかで何を食べていたか気になりませんか?
一つ有名なものをここでご紹介します。
それは…
「ハチクマライス」!

どんな料理かと言うと、目玉焼きをライスの上に乗せただけ。まさに、「まかない飯」という感じですが、これは日本各地でご当地バージョンがあったようですよ!
(今、人気の「鉄道博物館」でも食べられますので、ぜひ!)

苦難の時代を乗り越えて、ついに「車内販売」登場!

こうして明治に始まり大正、昭和と順調に成長してきた食堂車ですが、ついに苦難の時代が訪れます…。

そう、戦争です…。

戦争中は、すべての物資が国の統制におかれました。そのとき食堂車の運営は大打撃を受けてしまいました。
料理に使う食材はもちろん、燃料や食器、リネン類まで、とても不足してしまいました。スタッフのみなさんはクジラや乾燥のアナゴ、海草を原料にした麺など、あらゆる工夫をこらして対応しましたが、ついに1944(昭和19)年には食堂車の営業がストップしてしまいました…。

でも、当時のスタッフの方々はあきらめませんでした!
鉄道で遠方に行くためには、どうしても時間がかかります。なので、食事をとらないわけにはいかないですよね。でも食料、物資はありません…。

この逆境のなかで生まれたのが、
「鉄道パン」
です!

昭和24年頃の車内販売 鉄道パンの販売を再現(昭62.3.31東京駅15番線ホームにて)

この鉄道パン、配給を受けた小麦だけでは生地がうまくできず、なんと乾燥した野菜やミカンの皮、柿の皮、桑の葉っぱ、魚粉などをまぜて作ったものだったのですが、大ヒットしたそうです。
いまでは「ええ!? そんなものを入れるの!?」って言われるかもしれませんが、食糧難のこの時代では、1個20銭で売られるパンを求めて、たくさんの人が殺到したそうです。

……そして、この「鉄道パン」は、列車のなかで売られました。

そうです! 食堂車を除くと、これが日本の「車内販売」の第一号なんです!

苦難の時代でも、鉄道を利用する人たちにサービスし続けた、当時のスタッフさんたちに頭が下がりますね。

さて、なんとか戦争を乗り切ると、焼け野原の日本も経済復興をしはじめます。
終戦の4年後、1949(昭和24)年には、はやくも食堂車が復活し、それにあわせて、本格的な「車内販売」サービスがスタートしました!

鉄道パンの販売を再現(昭62.3.31東京駅15番線ホームにて) 昭和24年頃の車内販売

このときは上野〜青森、東京〜大阪、東京〜鹿児島、函館〜釧路など20本の列車での販売だけだったのですが、既に商品のラインナップは豊富になってきています。
売られていたのは、
弁当、湯茶、飲料、菓子、果物、氷菓、食品、煙草、新聞
です。
数年前まで戦争で物という物がなかったのに、終戦後4年でもう氷菓(アイス)まで登場するなんて、スゴいと思いませんか? また、今はお茶などはペットボトルで買うのが普通ですが、当時は販売員さんが、大きいヤカンでお茶を注いでいたようですよ。

このころから、車内で駅弁を食べる風景が、日本中の列車で見られるようになっていきます。そして昭和30年代以降、ドンドン国内が明るくなってくると、ここで鉄道を盛り上げるビッグイベントが二つやってきます!

一つは1964(昭和39)年の東京オリンピック、もう一つは1969(昭和44)年の大阪万博です。
東京オリンピックでは車内ブッフェが登場したり、万博では世界に誇る日本の新幹線に世界中のVIPたちが乗り込み、日本国内でも天皇皇后両陛下がご利用になられたり、国会議員団も利用したりしました。
万博のときに車内で接客をしたスタッフのみなさんは、天皇陛下におしぼりやクッキー、玉露、コーヒーなどをサービスされたようです。こうしたことからも分かるように、当時は車内販売アテンダントは花形でした。飛行機の客室乗務員と同様、女性の憧れの職業だったんですよ!

こうして列車の長旅には、駅弁を食べるシーンが定着しつつも、時代の流れとともに少しずつ状況は変化していきます。新幹線などの移動時間は短縮され、食堂車のニーズが減ったり、車内販売を待たなくとも、車外でお弁当が買えるようになったり、と。

でも、旅の車内で食べるごはんは、なんとも言えない魅力があると思いませんか?
楽しい旅の1ページ目のイベントがお弁当ですもんね。

ちなみに、おもしろいことに、「電車が動き始めてから駅弁のフタをあける人が多い!」という法則があるそうです。そういえば、発車前はガマンして、ゴトゴト動き出して、車窓の景色が眺められるようになってから食べるのがワクワクするんですよね。つまり、旅人はみんな知らず知らず、お弁当を非日常のイベントとして演出してるんですね。

今、駅弁のブームを再び起こすべく、たくさんのアイディアが加えられています。たとえば、ご当地の限定弁当や、東京をテーマにしたお弁当。
冷めてもおいしい独自のお米のブレンドや、炊き方にもこだわったり。車内で食べるお弁当は格別ですが、こうしたたゆまぬ努力で、車内販売の歴史は続いているんですね。

もちろん、実際にワゴンを押しているアテンダント(販売員)のみなさんも一人一人が、寒い日ならあたたかい飲み物を多めにワゴンに積んだり、家族連れが多い日なら子供向けのお菓子を多めにしたりと、ちょっとした工夫を重ねています。こうして細かいところにも、気を配ってお客さまにご満足いただけるサービスをしようという姿勢には、本当に頭が下がりますね。
美味しくなったお弁当や飲み物を、車内という空間で食べる喜び。
スタッフのみなさんは、車内販売で買うお弁当に、この「感動」とか「驚き」をしっかりつめこもうとしたんですね。

ということで、「アテンダント(販売員)さんってどんな仕事なの?」って気になりますね。来週は、プロのアテンダントさんが誕生するまでの研修風景をレポしたいと思います。あの笑顔の秘密は!?
次回もお楽しみに!

参考資料:日本食堂社史編纂室「日本食堂60年史」

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2月のテーマ

車内販売

第1回
「それは、「食堂車」から始まった」
2月5日更新
第2回
「アテンダントさんってどんな仕事なの?」
2月12日更新
第3回
「アテンダントの一日に密着取材!」
2月19日更新
第4回
「カリスマアテンダントの達人技!」
2月26日更新
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